
ほめられるとかえって居心地が悪い理由
謙遜よりも複雑な気持ちを読む
ほめ言葉はいつも表の自分とその結果に向けられますが、自分は内側の過程を全部知っているので、他人の話のように聞こえます。ほめられるのがとくに苦手な四つのタイプと、ほめ言葉を押し返さずに受け取る五つの方法をまとめました。
この記事の「自分」、本当にあなたですか? 表の自分・裏の自分を無料でチェック →
会議が終わるころ、チームリーダーがみんなの前で言います。「今回の資料のまとめ方、本当によかったです。」先に顔が熱くなって、口からは「いえいえ、みなさんが手伝ってくださったので」が飛び出します。席に戻ってからも、うれしいというより、どこか落ち着きません。夜に友達から「今日の服かわいいね」と言われても同じです。「これ、すごく昔のやつだよ」と返してから、ただありがとうと言えばよかったのに、なんであんなこと言ったんだろうと思います。
いい言葉をもらったのに、なぜ落ち着かないのでしょう。この記事では、ほめ言葉が居心地悪い気持ちをいくつかに分けてみて、どんな性質の人がよりそうなりやすいのか、そしてほめ言葉を押し返さずに受け取る方法についてお話しします。
ほめ言葉を押し返すのは、謙遜だけではありません
ほめられた瞬間に手を横に振る姿は、よく謙遜として受け取られます。でも内側をのぞいてみると、謙遜よりも複雑な気持ちが混ざっています。ほめ言葉は、いい言葉である前にひとつの評価です。誰かが自分を見ていて、点数をつけて、それを口に出して言ったのです。点数がよくても、評価される立場に立つことは、人によってはかなり緊張するものです。とくにほめられる機会が少なかった人にとっては、いい評価も慣れない評価です。
だから、ほめ言葉が居心地悪いからといって、自分がおかしいとか、ひねくれているわけではありません。ほめ言葉というものの中に込められているものが多くて、そのどれに反応するかが人によって違うだけです。
ほめ言葉は表の自分に届き、自分は裏の自分を知っています
ほめ言葉が落ち着かないいちばん大きな理由は、ここにあります。ほめ言葉はいつも相手が見たもの、つまり人前での自分とその成果に向けられます。でも自分はその裏側を全部知っています。締め切り前夜に投げ出したくなった夜、たまたまうまくいった部分、人に手伝ってもらった部分まで。
ほめられている姿と自分が知っている姿のあいだに距離があると、ほめ言葉が他人の話のように聞こえます。さらに「あとでがっかりされたらどうしよう」という心配までついてきます。ほめ言葉が高いほど、落ちる場所も高く見えるからです。人前での自分とひとりのときの自分のあいだの距離が遠い人ほど、この居心地の悪さが大きくなるのもそのためです。ほめられているのは表の自分なのに、そのほめ言葉を抱えて家に帰るのは裏の自分なのですから。
ほめ言葉がとくに苦手な四つのタイプ
協調性が高い人。 ほめ言葉を借りのように感じます。受け取ったら返さないと落ち着かないので、「あなたも今日かわいいよ」が反射的に出てきます。受け取るだけの瞬間がぎこちなくて、ほめ言葉を長く持っていられません。ほめられた日は、相手に何をしてあげればいいのか、しばらく考え込んでしまうこともあります。
組織性が高い人。 ほめ言葉が基準を引き上げます。「今回よかったね」が「次もこれくらいやらなきゃ」に聞こえます。しかもこのタイプは、ほめた人が気づかなかった抜けまで知っているので、ほめ言葉が大げさに感じられます。このタイプには、ばくぜんとしたほめ言葉より「この部分がよかったです」のような具体的な言葉のほうが、ずっと気楽に聞こえます。ばくぜんとしたほめ言葉は基準を上げるだけですが、具体的な言葉は何を続ければいいのかを教えてくれるからです。
情動性の振れ幅が広い人。 突然のほめ言葉に心が大きく跳ねます。顔が赤くなって、何を言えばいいのかわからなくなります。その感情が大きすぎて、早く終わらせようと「いえいえ」で慌ててふたをしてしまうのです。うれしさも大きく感じるタイプなので、かえってそのうれしさを見抜かれるのが照れくさかったりもします。
社会性が低い人。 大勢の視線がいっせいに集まること自体に、エネルギーを使います。ほめ言葉の中身よりも、みんなが自分を見ているその数秒が負担です。だから個別にもらったメッセージの一行はうれしくて、会議室でのほめ言葉は重たいのです。
どんなほめ言葉が苦手なのか、自分で確かめてみる
最近言われたほめ言葉を思い浮かべながら、当てはまる行を選んでみてください。
- 大勢の前でほめられるほうが、個別にほめられるより、ずっと落ち着かない。
- 結果をほめられると、たまたまうまくいった部分から思い浮かぶ。
- ほめられたら、似たようなほめ言葉をすぐに返さないと落ち着かない。
- 見た目をほめられると、ほとんど自動的に「そんなことないよ」が出てくる。
- ほめられたことは、次はもっとうまくやらなきゃいけない気がして負担になる。
- でも文章でもらったほめ言葉は、ひとりで何度も読み返す。
最初の五行のうちどれがいちばん響くかを見れば、自分の居心地の悪さが視線から来ているのか、借りを感じる気持ちから来ているのか、上がっていく基準から来ているのかが見えてきます。見た目をほめられるのがとくに難しいのは、見た目は自分ががんばってつくった結果だという感覚が薄いので、「ありがとう」が人の手柄を横取りする言葉のように感じられるからでもあります。最後の行まで当てはまるなら、ほめ言葉が嫌いなのではありません。人前ですぐに受け止めなければならないその瞬間が難しいのです。
ほめ言葉を押し返さずに受け取る五つの方法
ほめ言葉を押し返したとき、相手の側で何が起きているのかも一度考えてみる価値があります。ほめ言葉は小さな贈り物に似ています。「いえいえ、たいしたことないです」は謙虚に聞こえますが、渡した側からすると、贈り物を突き返されたように感じることがあります。自分の見る目が間違っていたと言われているようにも聞こえます。ほめ言葉を気楽に受け取る練習は、自分のためであると同時に、ほめてくれた人の気持ちを受け取ることでもあるのです。
- 「ありがとうございます」で止めます。 「いえいえ」も「たいしたことないです」もつけずに、お礼のひと言で終わらせます。最初は文が言い終わっていないみたいでぎこちないですが、何度かやってみると、そのぎこちなさはすぐに薄れます。一度目を合わせて短く笑えば、言葉が短くても気持ちは十分に伝わります。
- 事実を一行添えます。 「ありがとうございます。今回は資料の順番を決めるのに少し時間をかけたんです。」ほめ言葉を否定せずに、自分が知っている過程をひとかけら出すのです。外から見た結果と、内側で経験した過程がひとつの文の中で出会うので、他人の話のようだった感じが薄れます。見た目をほめられたなら、「ありがとう、この色、私も好きなんだ」のように自分の好みを一行添えるのもいいですね。
- お返しのほめ言葉はあとに回します。 ほめられてすぐに返すと、あいさつを交わしただけのように軽く聞こえます。相手に心からほめたいことがあるなら、別の日、別の場面で改めて伝えてみてください。そのほうがずっと長く心に残ります。
- 人前でほめられるのが重たいなら、先に伝えておきます。 身近な同僚やチームリーダーに「私はみんなの前より、個別に言っていただけるほうがうれしいです」と一度伝えておけば大丈夫です。ほめ言葉を断るのではなく、受け取り方を知らせておくのです。親しい友達にも「私、ほめられると照れて、つい否定しちゃうんだ。でも本当はうれしいんだよ」と一度言っておけば、お互い気が楽になります。
- ほめ言葉をためておくメモをつくります。 スマホのメモ帳に、言われたほめ言葉を一行ずつ書き写しておいてください。その場では押し返してしまっても、元気のない日に読み返すと、思った以上に力になります。誰がいつ言ってくれたのかも一緒に書いておけば、あとでその人にお礼を伝えるときにも役立ちます。
ほめ言葉が引き上げた基準のせいで自分を追い詰めてしまうなら、完璧主義は強みか足かせかでその気持ちを別に取り上げています。
こんなふうには読まないでください
- ほめ言葉が苦手だからといって、自己肯定感が低いという意味ではありません。自己肯定感がしっかりしている人でも、視線が集まる場面は居心地が悪いことがあります。自己肯定感の話がもっと気になるなら、自己肯定感がどんどん下がるときもあわせて読んでみてください。
- 謙遜が悪いという意味でもありません。ただ、謙遜と否定は違います。「ありがとうございます」は謙遜を損ないません。
- ほめられるたびに強い恥ずかしさや不安が押し寄せて、人を避けてしまうほどなら、ひとりで耐えるより専門家に相談してみてください。
おわりに
ほめ言葉が居心地悪いのは、自分が自分のことをよく知りすぎているからでもあります。相手は外から見た結果を話し、自分は内側で経験した過程を思い出すのですから。二つの絵が違うからといって、ほめ言葉が間違っているわけではありません。どちらも自分です。次にほめられたら、「いえいえ」の代わりに「ありがとうございます」で一度止まってみてください。
無料の性格テストは、人前での自分とひとりのときの自分を、5つの性格特性で別々に見せてくれます。二つの場面の距離がどこで大きく開いているのかを見れば、ほめ言葉がなぜ他人の話のように聞こえるのかが、もう少しはっきりしてきます。
この記事は自己理解を助けるためのもので、心理診断や治療の代わりにはなりません。
