
自尊心を高める方法
「決意」だけではうまくいかないとき
「私は大切な存在だ」と百回唱えても次の日にまた崩れてしまうなら、やり方を変えるタイミングです。自尊心は決意ではなく、自分との約束を守った記録で積み上がっていき、その約束が破れるポイントは肌理によって違います。
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日曜の夜、明日からは変わろうと決めます。朝6時半に起きて運動し、夜は本を読み、寝る前はスマホを遠ざける、と。月曜の朝、アラームを止めて二度寝したところで一つ目の約束が破れ、水曜の残業で二つ目が破れます。木曜あたりには、決心そのものがなかったことになっています。そして残るのは、運動できなかったという事実ではなく、「やっぱり私はこういう人間なんだ」という一文です。
自尊心を高めようと立てた計画が、かえって自尊心を削ってしまう。これは思っているよりよくあることです。「私は大切な存在だ」と百回唱えても、次の日に誰かに一言言われると、また崩れてしまいますよね。意志が弱いからではなく、自尊心がもともとそういう仕組みで動くものではないからです。この記事では、自尊心が実際にどう積み上がっていくのか、なぜ決心がいつも逆効果になるのか、そして肌理ごとに積み上げ方をどう変えればいいのかをひもといていきます。
自尊心は、自分への信頼の記録です
周りに約束をきちんと守る友だちがいると、その友だちの言葉は信じられるようになります。特別な理由があるからではなく、守ってきた記録があるからです。自分に向き合う気持ちもまったく同じです。自分が自分に言ったことを守ってきた記録が積み重なると、「私は信じるに足る人だ」という感覚が生まれます。これが、自尊心の土台です。
だから、いい言葉を唱えるより、小さな約束を一つ守るほうが長続きします。言葉は根拠がなければ裏の自分が信じてくれませんが、記録はそれ自体が根拠になるからです。もう一ついいことがあります。人からの褒め言葉は自分ではコントロールできませんが、自分との約束は、自分で決めて自分で守れます。基準点が、外から内側へ入ってくるのです。
決心がかえって自尊心を削る理由
問題は、私たちがたいてい、いちばん調子のいい日の自分を基準に約束を決めてしまうことです。やる気にあふれた日曜の夜に月曜からやることを決めると、その約束は調子のいい日の自分にしか守れません。ところが一週間には、疲れている日、気分が沈む日、急に仕事が押し寄せる日が必ずはさまっています。
そんな日に約束が破れると、記録には「また守れなかった」が一行増えます。決心を大きくするほど失敗の記録が早くたまり、その記録が「やっぱり私はダメだ」の根拠になります。自尊心を積み上げるための計画が、逆に削る材料になってしまうわけです。意志が足りないのではなく、約束の大きさの決め方がずれていたのです。
最初の場面の計画を、いちばん悪い日を基準に直してみると、こうなります。
- 6時半に起きる → アラームが鳴ったら起きて、水を一杯飲む
- 毎日運動する → 運動着を着て、玄関まで出る
- 毎晩本を読む → 寝る前に1ページだけ読む
- スマホを遠ざける → 充電器を、ベッドから手の届かない場所に挿す
この四つを一度に始める必要もありません。一つを2週間ほど守って「これはできるな」と思えたら、次のものを足します。約束がいくつもあると、一つが破れたときに残りまで一緒に崩れやすくなるからです。
約束が破れるポイントは、肌理によって違います
同じ約束でも、崩れるポイントは人によって違います。自分の肌理に合わせて約束を組めば、ずっと破れにくくなります。
| 肌理 | 約束が破れやすいポイント | 合った積み上げ方 |
|---|---|---|
| 協調性が高い肌理 | 人から頼まれごとが来ると、自分との約束をいちばん先に後回しにします | 自分との約束も、人との約束のようにカレンダーに書きます |
| 感情の振れ幅が広い肌理 | 気分が沈んだ日に一度抜けると、「今週はもうダメ」に広がります | 気分がどん底の日でもできる最小バージョンを決めておきます |
| 社会性が高い肌理 | 一人でする約束は誰も知らないので、うやむやになります | 一緒にやる人や、結果を分かち合う場を一つつくります |
| 社会性が低い肌理 | 人にもまれた日には、残りの力がありません | 約束を、一人でいる時間帯にくっつけておきます |
社会性が高い肌理に分かち合う場をすすめるのは、褒めてもらいなさいという意味ではありません。うやむやにならないように引き留めてくれるひもを、一本用意しておくという意味です。二つ以上の行に当てはまるなら、やり方を混ぜてもかまいません。協調性が高く、感情の振れ幅も広いなら、最小バージョンで決めた約束をカレンダーに書いておく、といった具合です。表の中で自分の位置を探してみると、これまでうまくいかなかった理由が、意志ではなく設計だったことが見えてきます。
今日から積み上げる五つの方法
- 約束は、いちばん悪い日を基準に決めましょう。 上で直してみたように、小さすぎてばかばかしく見えてもかまいません。目標は運動量や読書量ではなく、「守った」という記録です。玄関まで出たついでにもっと歩きたくなったら、歩けばいいのです。ただし、多くできた日を新しい基準にはしないでください。基準は、ずっと悪い日に合わせておきます。
- 自分との約束に、時間を固定しましょう。 カレンダーに「夜8時・自分」と書いておき、その時間に別の頼まれごとが来たら、「その時間は先約があるんだ」と言ってみてください。うそではありません。本当に先約があるのです。協調性が高い肌理にとくに合う方法です。社会性が高い肌理なら、友だちと「今週は二人とも3回歩こう」のようにペアを組んで時間を合わせるのもいいでしょう。
- 一日一行、気分ではなく事実を書きましょう。 「今日はまあまあだった」のような気分ではなく、「お昼のあと10分歩いた」「後回しにしていたメールを一通送った」のように、やったことを書きます。気分は次の日には変わりますが、事実は残ります。1か月ほどたまると、揺らいだ日に取り出して見られる根拠になります。誰かの一言で崩れた夜には、そのリストを上から読んでみてください。「私は大丈夫な人だ」という言葉より、「3週間ほぼ毎日、玄関まで出た」という記録のほうが、裏の自分をずっとよく説得してくれます。
- 2回続けて抜けることだけはしない、と決めましょう。 1回抜けるのは、記録の一部です。崩れるのは、1回抜けたのを言い訳にして全部を手放してしまうときです。「昨日できなかったから、もうおしまい」ではなく、「今日やればつながる」と自分に言ってあげてください。感情の振れ幅が広い肌理なら、このルール一つのほうが、決心十個より長続きします。
- 自分が得意な肌理を、あえて一度使いましょう。 弱いところを埋めることばかりしていると、自尊心が積み上がるすき間がありません。人と人をつなぐのが得意な人なら、久しぶりに友だち二人をお互いに紹介してみる、几帳面な人なら家族旅行の日程を組んでみる、といった具合です。「これは私が得意なことなんだ」という確認も、立派な記録です。
こんなふうに読まないでください
自尊心が高いというのは、決して揺らがないという意味ではありません。自尊心がしっかりしている人も、批判されれば痛いし、悪い日には沈みます。違うのは、戻ってくるスピードです。だから、揺らいだからといって「私はまだまだだ」と採点しなくていいのです。
自尊心と自信も、同じ言葉ではありません。プレゼンはあいかわらず緊張するし、運転はあいかわらず苦手でも、「それでも私は自分を信じていい」という感覚は持てます。得意なことが多くないと自尊心が生まれないのではなく、苦手なことがあっても自分を見捨てないことに近いのです。
これらの方法が、自分を追い立てる新しい宿題になってもいけません。記録できない日があってもかまいません。この記事は自己理解を助けるためのもので、心理診断や治療の代わりにはなりません。どれだけ小さくしても約束一つ守る力さえない日が長く続くなら、それは意志の問題ではないかもしれません。そんなときは、専門のカウンセラーに相談してみてください。
小さく守った約束が、やがて自分を信じさせてくれます
自尊心は、ある日パッと入るスイッチではなく、守った約束が少しずつ積み重なった記録です。大きな決心一つより、自分の肌理に合わせた小さな約束十個のほうが、遠くまで行けます。今日やることは一つで十分です。いちばん悪い日でも守れる約束を一つ決めて、今夜それを守れたかどうかを一行書くこと。自尊心がなぜ特定の日にがくんと下がるのかが気になるなら自己肯定感がどんどん下がるときを、くり返しが本当に人を変えるのかが気になるなら性格は変わるのかもあわせて読んでみてください。無料の性格テストで自分の肌理を先に確かめておけば、上の表の中で自分の位置がどこなのか、もっと正確に見えてくるはずです。
